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4. まとめ

以上、3カ年に亘り行ってきたムース化油の焼却処理技術に関する調査研究の結果について述べてきたところであり、実地の検証ができなかったり、小規模な実験データを利用せざるを得なかった点や、熱放射からの安全距離等における数値的評価が必ずしも十分でない点はあるものの、各種の試験結果等を踏まえ、概略次のような結論を得ることができた。
第一に、この焼却処理技術は、既に燃えない状態となっているムース化油を処理薬剤を使った化学処理により油水分離して燃焼させる処理燃焼方式を採用している。処理薬剤には界面活性剤を主成分とする乳化破壊剤を使用しているが、油種により多少の選択が必要である。また、処理薬剤の散布には小型ポンプを使った噴霧状散布が最適であり、散布量はムース化油の粘度に応じて多少加減するとともに、散布後の静置時間を調整する必要がある。更に、この処理技術の特徴は、処理薬剤を散布した範囲のムース化油しか燃焼しないことから、散布面積を調整することにより燃焼の制御が可能であり、周囲環境への影響を抑制し作業の安全性を確保することが可能である。
第二に、この焼却処理技術は、ムース化した原油及び重油の全ての油種に対して適用することが可能である。実験的に焼却できたムース化油の含水率は60%を超すが、含水率が大きくなると焼却効果がやや減少する傾向にあり、焼却限界としては70〜80%程度と考えられる。
第三に、海上において焼却処理を行う際の気象海象による限界は、我が国において海上での油の焼却処理事例がないことから、諸外国の燃える油の海上実験例を参考にして推測すれば、波高1m程度であれば、この焼却処理技術の適用が可能であると推測される。
第四に、化学処理したムース化油の焼却処理により生ずる燃焼ガス、煤の大気環境への影響、処理薬剤の海洋生態系への影響について調査したところでは、一酸化炭素・硫黄酸化物等の燃焼ガス成分については、処理薬剤の必要散布量が少量であることから、薬剤を添加したことによる大気への顕著な影響は認められていない。更に、煤の発生については、煤抑制剤の添加は煤の濃度を4分の1程度まで顕著に抑制できることから、焼却処理には大いに有効である。また、処理薬剤の海洋生態系への影響については、薬剤含有物質の燃焼残渣水へ

 

 

 

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